- まえがき
- 1-1. いま、このテーマを問う必然性
- 1-2. 「組織」と「個人」の関係史
- 1-3. なぜ「本質」を見失うのか
- 1-4. 著者・小笹芳央の視点
- 1-5. 世界的潮流との比較
- 1-6. この章のまとめ
- 2-1. 組織は「時代の鏡」である
- 2-2. 20世紀型組織の特徴
- 2-3. 日本型経営の黄金期とその陰り
- 2-4. 21世紀型組織への転換
- 2-5. 世界的潮流との融合
- 2-6. 移行期の課題
- 2-7. 組織進化の原則
- 2-8. この章のまとめ
- 3-1. 「働く」という行為の原点
- 3-2. 「仕事=生活の糧」から「自己実現の場」へ
- 3-3. ワークライフバランスからワーク・イン・ライフへ
- 3-4. 働き方の多様化と価値観の分岐
- 3-5. 世代ごとの働き方の価値観
- 3-6. 企業が直面する課題
- 3-7. 働くことの本質的意義
- 3-8. まとめ
- 4-1. エンゲージメントとは何か
- 4-2. 日本企業におけるエンゲージメントの現状
- 4-3. 忠誠型エンゲージメントから共感型へ
- 4-4. 個人の役割の再定義
- 4-5. エンゲージメントを高める条件
- 4-6. マネジメント側の責務
- 4-7. 個人がエンゲージメントを高めるためにできること
- 4-8. まとめ
- 5-1. 管理からリーダーシップへの時代転換
- 5-2. 従来型リーダーシップの限界
- 5-3. 21世紀型リーダーシップの特徴
- 5-4. リーダーに求められる新しいスキル
- 5-5. マネジメント手法の再構築
- 5-6. リーダーシップ文化を根付かせる条件
- 5-7. 失敗から学ぶリーダーシップ
- 5-8. まとめ
- 6-1. なぜ評価制度が機能しなくなったのか
- 6-2. 年功序列制度の功罪
- 6-3. 成果主義の限界
- 6-4. 本質的に「公正な制度」とは
- 6-5. 評価の新潮流:ポテンシャルと行動に注目せよ
- 6-6. 最新評価モデル:OKR・360度評価・バリュー評価
- 6-7. 評価制度を活かすには“制度設計”より“運用設計”
- 6-8. 制度と組織文化は一体である
- 6-9. まとめ
- 7-1. OJT神話の終焉
- 7-2. リスキリングとリカレント教育の必然性
- 7-3. 学び続ける組織の条件
- 7-4. 人材育成の三層モデル
- 7-5. 国内外の先進事例
- 7-6. マネジメント層の役割
- 7-7. 個人ができる「自分を育てる戦略」
- 7-8. まとめ
- 8-1. なぜ今「境界を越える」必要があるのか
- 8-2. グローバル化の三つの波
- 8-3. 多様性(ダイバーシティ)の本質
- 8-4. 多様性が組織にもたらす効果
- 8-5. ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の課題
- 8-6. 成功事例
- 8-7. 多様性を活かすマネジメント
- 8-8. 個人が境界を越えるために必要なスキル
- 8-9. まとめ
- 9-1. 技術革新が働き方を変えてきた歴史
- 9-2. AIと自動化の影響
- 9-3. メタバースと仮想空間労働
- 9-4. テクノロジーが変える組織の形
- 9-5. テクノロジー活用における課題
- 9-6. テクノロジー時代の必須スキル
- 9-7. 未来予測:働き方はどうなるか
- 9-8. 人間らしい働き方を守るために
- 9-9. まとめ
- 10-1. 時代の変化と働き方の再定義
- 10-2. 本質的な組織像
- 10-3. 本質的な働き方の条件
- 10-4. 制度・文化・リーダーシップの三位一体
- 10-5. 個人へのメッセージ
- 10-6. 組織への提言
- 10-7. 未来への展望
- 10-8. 最終メッセージ
- あとがき
まえがき
私たちは、かつて経験したことのない時代の変化の中にいます。
テクノロジーは働き方を一変させ、グローバル化は組織の境界を曖昧にし、多様な価値観が職場で交錯しています。かつて当たり前だった終身雇用や年功序列は崩れ、ジョブ型雇用やリモートワーク、副業といった新しいスタイルが台頭しました。
こうした変化は、単なる制度や働き方の流行ではなく、「組織」と「働く」という行為そのものの本質を揺さぶっています。組織は何のために存在し、働くことにはどのような意味があるのか――この問いへの答えを見つけなければ、私たちは時代の波に翻弄されるばかりです。
本書は、小笹芳央氏の知見と豊富な事例をもとに、組織の進化、働き方の多様化、マネジメントの変容、公正な制度設計、人材育成、グローバル化、テクノロジーの影響、そして未来展望までを体系的に整理しました。
読者の皆様が、自らの働き方を主体的に選び取り、組織と共に成長していくための羅針盤となれば幸いです。
目次
6-6. 最新評価モデル:OKR・360度評価・バリュー評価
① OKR(Objectives and Key Results)
第1章 序章:なぜ「組織と働き方の本質」を問うのか
1-1. いま、このテーマを問う必然性
私たちは、歴史的に見ても稀有な転換点に立っています。
昭和から平成、そして令和へと移り変わる中、日本の企業組織はその形態も価値観も激変しました。かつて世界を席巻した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代、日本企業は終身雇用・年功序列・企業別労働組合という三種の神器を強みに、長期安定成長を実現しました。
しかし、バブル崩壊後の長期停滞とグローバル化の波は、この基盤を根底から揺るがしました。終身雇用は「約束」ではなく「期待」に過ぎないものとなり、年功序列は成果主義やジョブ型雇用に取って代わられつつあります。
本書の著者・小笹芳央氏は、この変化を単なる制度の移行ではなく、「働く」という人間活動の根源的な再定義だと捉えています。組織とは何か、働き方とは何か――その本質を問い直すことこそが、現代の私たちに必要なのです。
1-2. 「組織」と「個人」の関係史
戦後の高度成長と企業共同体
戦後復興期から高度成長期にかけ、日本企業は「家族主義的経営」と呼ばれるモデルを築きました。社員は企業に忠誠を誓い、企業は社員とその家族を生涯守る。この相互依存関係は、雇用の安定と長期的なキャリア形成を保証しました。
バブル崩壊と新自由主義の到来
1990年代に入り、バブル崩壊による経済停滞と国際競争の激化が、企業に効率化と成果主義を迫ります。ここで初めて、日本型経営の根幹が揺らぎ始めます。リストラ、非正規雇用の増加、成果主義人事――これらはすべて「個人と組織の距離」を広げました。
グローバル化とデジタル革命
2000年代以降、インターネットとスマートフォンの普及は、働く場所や時間の制約を解き放ちました。テレワーク、副業、フリーランスといった多様な働き方が現実的な選択肢となり、組織は「物理的な集まり」から「目的のためのネットワーク」へと変容していきます。
1-3. なぜ「本質」を見失うのか
著者は指摘します。
多くの企業が制度改革や働き方改革を唱えますが、その多くは表層的な改善にとどまっている、と。フレックスタイム制、リモートワーク導入、カジュアルなオフィスデザイン…。これらは重要な一歩ではあるものの、「働く意味」や「組織の存在理由」という根底の問いに答えてはいません。
表面的な改革だけでは、結局のところ従業員のエンゲージメントは高まらず、組織の競争力も維持できません。制度は本質の結果であり、本質そのものではない――これが本書の核心です。
1-4. 著者・小笹芳央の視点
小笹氏は、長年にわたり人材開発・組織コンサルティングに携わってきた実務家です。
リーダーシップ開発、企業文化変革、従業員エンゲージメント向上といったテーマを、経営陣と現場の両面から見つめ続けてきました。その経験から導かれたのは、次のような信念です。
「組織は人のためにあり、人は組織を通して社会に貢献する」
この相互循環が断ち切られたとき、組織は形骸化し、働く人は疲弊します。本質とは、この循環をいかに維持・進化させるかにあります。
1-5. 世界的潮流との比較
米国:個人主義と成果主義が前提。優秀な人材は組織を渡り歩き、プロジェクトごとに最適化されたチームを形成。
欧州:労働時間短縮や休暇制度の充実に象徴されるように、生活と労働のバランスを重視。
日本:依然として「組織への帰属意識」が強く、雇用安定志向が根強いが、若年層ほど流動性が高まっている。
こうした国際比較は、日本の組織がどの方向へ舵を切るべきかを考えるヒントになります。
1-6. この章のまとめ
現代は組織と働き方が同時に揺らぐ歴史的転換点
表面的な制度変更ではなく、「働く意味」と「組織の存在理由」という本質的問いが重要
著者は長年の現場経験から、組織と個人の相互循環こそが鍵とする
日本的経営の強みを活かしつつ、世界的潮流に適応する必要がある
第2章 組織の進化論:20世紀型から21世紀型へ
2-1. 組織は「時代の鏡」である
組織は、単なる人の集まりではありません。それは社会の経済構造、技術水準、価値観を反映する「時代の鏡」です。
20世紀初頭の工業化社会では、組織は大量生産を可能にするための効率性を追求しました。これはヒエラルキー型組織(階層型組織)の誕生を促しました。
企業は軍隊のようにトップダウンで動き、命令と統制が情報伝達の基本でした。このモデルは製造業に適しており、トヨタ、日立、松下電器といった企業もこの枠組みの中で成長しました。
2-2. 20世紀型組織の特徴
① 明確な役割分担と職務記述書
仕事は分業化され、誰が何を担当するかが厳格に定義されました。製造ラインの作業員から管理職まで、職務記述書(ジョブディスクリプション)が存在し、成果は規定の業務を遂行することで測られます。
② 終身雇用と年功序列
日本型組織の根幹は「長期雇用関係」でした。企業は社員を採用すると定年まで雇用し、その間の昇給・昇進は勤続年数に応じて行われます。
このモデルは企業への忠誠心を生み、社員も安心して長期的スキル形成に取り組めました。
③ 上意下達と垂直的コミュニケーション
組織の意思決定はピラミッドの頂点に集中し、情報は下から上へ、命令は上から下へ流れます。これは迅速な指揮命令系統を可能にする一方、現場の創造性を抑制する側面もありました。
2-3. 日本型経営の黄金期とその陰り
1960〜1980年代、日本企業は高品質・低コスト・安定供給を武器に世界市場で圧倒的な競争力を誇りました。トヨタのカンバン方式、ソニーの革新製品、松下幸之助の経営哲学…。この時代、日本型組織は世界から称賛され、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれます。
しかし、このモデルは次第に硬直化します。バブル崩壊後、長期雇用を前提とした組織はコスト高となり、国際競争力を失い始めました。また、IT革命やグローバル化に迅速に適応できず、「変化への弱さ」が露呈します。
2-4. 21世紀型組織への転換
2000年代に入ると、IT技術の急速な進化が働き方を根本から変えました。クラウド、SNS、モバイル端末の普及は、物理的なオフィスを必須条件から解放し、ネットワーク型組織が台頭します。
特徴① フラット化
役職や階層を減らし、意思決定を現場に近づけます。米GoogleやNetflixのように、階層よりも機能的チームを優先する組織設計が増えました。
特徴② プロジェクト型・クロスファンクショナルチーム
部門を越えたチーム編成により、マーケティング・開発・営業が同じゴールに向かって動きます。これは変化の激しい市場に対応するための柔軟性を生みます。
特徴③ ジョブ型雇用と成果主義
日本でも徐々にジョブ型雇用が広がっています。社員は職務単位で採用され、成果に応じて報酬が決まります。これにより採用・解雇の自由度が高まり、即戦力確保が容易になります。
2-5. 世界的潮流との融合
米シリコンバレー型:高速な意思決定と試行錯誤を重視。失敗は学びとみなされ、次の挑戦を奨励。
北欧モデル:高い労働者自治と柔軟な働き方(フレックスタイム・在宅勤務)が標準化。
中国型:巨大市場を背景に、人材と資本を集中的に投入するスピード経営。
日本企業はこれらを部分的に取り入れていますが、自国文化との摩擦が課題です。たとえば成果主義導入後の社内不和や、リモートワークと長時間労働の共存などです。
2-6. 移行期の課題
旧来文化との衝突
ベテラン層と若手層の価値観の断絶。
評価制度の再設計
ジョブ型導入後も、従来の年功的評価が残存し混乱を招く。
リーダーシップの再定義
トップダウンからサーバント型への移行が不十分。
2-7. 組織進化の原則
著者は、組織進化の成否を決めるのは「構造」ではなく「目的」と「文化」だと強調します。
制度だけを変えても文化が変わらなければ、組織は古い習慣に引き戻されます。逆に文化が進化すれば、制度は自然に適応します。
2-8. この章のまとめ
20世紀型組織は効率と安定性に優れたが、変化に弱かった
21世紀型組織は柔軟性とスピードを重視し、ネットワーク化・プロジェクト化が進む
制度改革と文化改革を同時に行うことが進化の鍵
日本企業は世界的潮流を部分的に取り入れつつ、文化摩擦をどう乗り越えるかが課題
第3章 働き方の本質:仕事と人生の接点
3-1. 「働く」という行為の原点
働くことは、生存のための手段であると同時に、社会との接点を持つための行為でもあります。
人類史を遡れば、狩猟採集時代の労働は生き延びるための「共同作業」でした。農耕の発展とともに、労働は「役割分担」と「生産性向上」のために体系化されます。
この時代、働くことは生活そのものであり、人生と切り離せない営みでした。
産業革命以降、労働は賃金を得るための時間売買へとシフトします。現代の働き方はこの延長線上にありますが、近年は再び「生き方」と「働き方」の境界が揺らいでいます。
3-2. 「仕事=生活の糧」から「自己実現の場」へ
20世紀の大半、働くことは生活費を稼ぐための手段として認識されてきました。しかし、経済の安定や教育水準の向上により、人々は自己実現欲求を働き方に求めるようになります。
心理学者マズローの欲求段階説によれば、生理的欲求・安全欲求が満たされた後、人は所属・承認・自己実現を求めます。現代の先進国では、多くの人がこの高次欲求を仕事に結びつけています。
「やりがいのある仕事をしたい」
「社会に貢献できる働き方を選びたい」
「自分の価値観に合った組織で働きたい」
3-3. ワークライフバランスからワーク・イン・ライフへ
2000年代以降、「ワークライフバランス」という概念が注目されました。これは、仕事と生活のバランスをとることを目的とした考え方です。しかし近年では、「ワークライフインテグレーション(ワーク・イン・ライフ)」へと進化しつつあります。
ワークライフインテグレーションでは、仕事と生活を明確に分けるのではなく、互いを補完し合う関係として捉えます。リモートワークや副業の普及は、生活の中に自然に仕事を溶け込ませる土壌を作りました。
3-4. 働き方の多様化と価値観の分岐
① 働く場所の自由化
テレワーク、ノマドワーク、ワーケーションなど、働く場所の制約は急速に減少しています。インターネットさえあれば、自宅・カフェ・海外からでも同じ業務が可能です。
② 働く時間の柔軟化
フレックスタイム制や時短勤務、副業・兼業解禁によって、働く時間は個人の生活スタイルに合わせやすくなりました。
③ 働く目的の多様化
高収入志向、社会貢献志向、クリエイティブ志向など、仕事に求める目的は世代や個人によって大きく異なります。
3-5. 世代ごとの働き方の価値観
団塊世代:安定雇用と企業への忠誠
バブル世代:組織での昇進・成果主義への適応
氷河期世代:雇用不安への対応力と個人スキル重視
ミレニアル世代:柔軟性と自己実現志向
Z世代:多様性・サステナビリティ・仕事と遊びの融合
3-6. 企業が直面する課題
モチベーションの源泉の多様化
一律のインセンティブ制度では人を動かせない。
キャリアの「所有者」の変化
企業がキャリアを与える時代から、個人がキャリアを設計する時代へ。
離職と流動性の加速
条件の良い職場や価値観の合う組織への移動が一般化。
3-7. 働くことの本質的意義
著者は、働き方の本質は次の三要素に集約されると指摘します。
価値創造:自分の行動が他者や社会に何らかの価値を生み出すこと。
成長:働く過程で自分自身の能力や視野が広がること。
つながり:組織や顧客、社会との関係を通じて自己を拡張すること。
3-8. まとめ
働き方は「生活の糧」から「自己実現の場」へ進化
ワークライフバランスからワーク・イン・ライフへ
働き方は多様化し、目的も人によって異なる
本質は価値創造・成長・つながりにある
第4章 組織における個人の役割:エンゲージメントの再定義
4-1. エンゲージメントとは何か
「エンゲージメント」という言葉は、単に「社員満足度」や「モチベーション」を意味するものではありません。
組織と個人が互いに価値を与え合う関係性を指し、その中には以下の要素が含まれます。
感情的つながり:組織の理念や目標への共感
主体的行動:自らの役割を超えて貢献しようとする意思
持続的関与:困難な状況でも組織と共に挑戦を続ける姿勢
米国ギャラップ社の定義によれば、エンゲージメントの高い社員は生産性が高く、離職率も低く、顧客満足度にも好影響を与えるとされています。
4-2. 日本企業におけるエンゲージメントの現状
残念ながら、日本はOECD諸国の中で従業員エンゲージメントのスコアが最下位レベルに位置しています。
理由としては以下が挙げられます。
上意下達文化による裁量権の欠如
目的よりも手段(ルール遵守)を重視する風土
成果よりも勤続年数や年齢を重視する評価制度
社員の意見が経営層に届きにくい構造
結果として、社員が「自分の仕事が組織や社会にどう貢献しているか」を実感しにくくなっています。
4-3. 忠誠型エンゲージメントから共感型へ
昭和〜平成初期、日本企業は忠誠型エンゲージメントに依存していました。
企業への忠誠心は、終身雇用・年功序列・福利厚生という「保障」によって支えられていました。
しかし、雇用保障が弱まり転職が一般化した現代では、忠誠だけでは人を引き留められません。代わりに重要になるのが共感型エンゲージメントです。
共感型では、個人は組織のビジョンや価値観に共感し、そこに自分の存在意義を見いだします。この関係は「与えられる保障」よりも、「共に創る価値」で維持されます。
4-4. 個人の役割の再定義
現代の組織における個人の役割は、単なる職務遂行者ではなく、価値共創者です。
価値共創者としての役割は以下の3つに整理できます。
目的共鳴者
組織の存在意義や長期的目標に共鳴し、自らの行動をそれに結びつける。
変革推進者
現状に甘んじず、改善や革新を提案・実行する。
ネットワーク構築者
社内外に信頼関係を広げ、組織の価値を拡散させる。
4-5. エンゲージメントを高める条件
エンゲージメントの高い組織には、共通する環境条件があります。
心理的安全性:自由に意見を言える雰囲気
透明性:意思決定プロセスや情報がオープン
裁量権:仕事の進め方や優先順位を自分で決められる
成長機会:スキルアップや新しい挑戦の場が提供される
公正な評価:努力や成果が適切に認められる
4-6. マネジメント側の責務
リーダーやマネージャーは、エンゲージメントを高めるために以下を実行する必要があります。
ビジョンの明確化
組織がどこへ向かうのかを、全員が理解できる形で示す。
個別対応
社員一人ひとりの価値観や動機に合わせたコミュニケーション。
権限移譲
業務の一部を任せ、責任と裁量をセットで渡す。
フィードバック文化
成果だけでなく、過程や行動にもフィードバックを行う。
4-7. 個人がエンゲージメントを高めるためにできること
自分の価値観と組織の価値観を照らし合わせる
与えられた役割を超えて価値を生み出す行動を探す
組織内で信頼関係を積極的に構築する
自己成長のための学びを継続する
4-8. まとめ
エンゲージメントは忠誠心ではなく「価値共創」への関与
日本企業の低エンゲージメントは制度と文化の両面に課題
個人は価値共創者として、目的共鳴・変革推進・ネットワーク構築の役割を果たすべき
マネジメントは心理的安全性・透明性・裁量権を提供することでエンゲージメントを高められる
第5章 マネジメントの再構築:リーダーシップの変容
5-1. 管理からリーダーシップへの時代転換
20世紀型マネジメントは、「計画・指示・監督・統制」が基本でした。
管理職は組織の命令系統の一部として、上層部の意向を現場に落とし込み、効率的な業務遂行を保証する役割を担っていました。
しかし、急速な市場変化や技術革新の中では、命令と統制だけでは組織は機能しません。変化に対応するためには、現場の自主性と創造性を引き出すリーダーシップが不可欠です。
5-2. 従来型リーダーシップの限界
限界① 指示待ち文化の助長
上からの指示を待つ組織では、現場での意思決定スピードが遅く、変化への即応ができません。
限界② イノベーションの阻害
指示通りに動くことが評価される環境では、新しいアイデアや異論が生まれにくくなります。
限界③ 人材の流出
自由度や裁量を求める若手人材は、硬直した組織文化を嫌い、外部に流れます。
5-3. 21世紀型リーダーシップの特徴
著者は現代のリーダー像を次の3つに集約します。
サーバントリーダー(支援型)
メンバーの成長と成功を第一に考え、支援する役割を担う。
例:スターバックス創業者ハワード・シュルツの従業員重視の姿勢。
トランスフォーメーショナルリーダー(変革型)
ビジョンを示し、組織全体を変革へと導く。
例:スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した際の方向転換。
コーチ型リーダー
指示よりも質問を通じてメンバーの思考を引き出し、自律性を高める。
例:Googleが導入した「ガイドとしてのマネージャー」モデル。
5-4. リーダーに求められる新しいスキル
ビジョンメイキング:変化の方向性を明確に描く力
コミュニケーション能力:双方向かつ透明性のある情報共有
ファシリテーション:会議や議論を活性化し、全員が意見を出せる場を作る
感情知能(EQ):相手の感情を理解し、適切に対応する力
適応力:不確実性の中で素早く方針転換できる柔軟性
5-5. マネジメント手法の再構築
① 権限委譲(デリゲーション)の徹底
リーダーがすべてを決めるのではなく、責任と権限をセットでメンバーに渡す。
② 目標管理(OKR・MBO)の進化
結果だけでなく、プロセスや学びも評価対象に含める。
③ アジャイルマネジメント
短いサイクルで計画・実行・検証を繰り返し、変化に適応する。
5-6. リーダーシップ文化を根付かせる条件
心理的安全性の確保
異なる意見や失敗が受け入れられる土壌を作る。
ロールモデルの存在
組織の中で理想的なリーダーが実際に行動していること。
継続的な育成
管理職研修やコーチングを通じてリーダーを育て続ける。
5-7. 失敗から学ぶリーダーシップ
著者は、リーダーは「完璧である必要はない」と強調します。
重要なのは、失敗を隠さず共有し、そこから学びを引き出す姿勢です。これにより、メンバーも挑戦しやすい文化が醸成されます。
5-8. まとめ
従来型の指示命令型マネジメントは変化対応力を阻害する
21世紀型リーダーはサーバント型・変革型・コーチ型の要素を兼ね備える
ビジョン、コミュニケーション、EQ、適応力が鍵
リーダーシップ文化は心理的安全性と継続的育成によって根付く
第6章 制度と評価の本質:公正さの再設計
6-1. なぜ評価制度が機能しなくなったのか
多くの企業が「評価制度に不満を抱える」現実に直面しています。
その主な原因は以下の通りです:
評価の基準が曖昧で、何が評価されているのかわからない
上司の主観に強く依存しており、公平性に欠ける
目標と成果が正しく連動していない
評価が報酬やキャリアに直接つながっていない
このような状態では、評価制度はむしろ「信頼を損なう装置」になってしまいます。
6-2. 年功序列制度の功罪
かつての日本企業の主流は「年功序列型」の評価制度でした。
これは「長く勤めれば報われる」という暗黙の了解によって、社員のロイヤルティを高める一方、以下の問題も生み出しました。
実力主義を阻害し、優秀な若手のモチベーションを下げる
組織の硬直化と無駄なポストの温存
成果を出さなくても昇進する“居座り文化”の助長
バブル崩壊後、多くの企業が成果主義に舵を切りましたが、そこにも落とし穴がありました。
6-3. 成果主義の限界
成果主義は一見“合理的”に見えますが、導入初期の日本企業では以下のような副作用が生じました。
協力よりも個人主義が強まり、組織の一体感が低下
短期成果ばかりが評価され、長期的視点が失われた
部下を育てるよりも、自分の数字を追いかける上司が増加
透明性が低く、評価の納得感を得にくい
つまり、「評価する側」も「される側」も、真の納得感を得られない制度になっていたのです。
6-4. 本質的に「公正な制度」とは
著者は、公正さとは“完全な平等”ではなく、“納得できる違いの説明があること”だと定義します。
すなわち、公正な制度とは:
6-5. 評価の新潮流:ポテンシャルと行動に注目せよ
今後の評価制度は、成果だけでなく、ポテンシャルや行動に焦点を当てるべきだと著者は主張します。
ポテンシャル評価:将来的な成長力・課題発見力・学習意欲
行動評価:成果を導いたプロセス、周囲への影響力、チーム貢献度
これにより、結果を出していない段階でも「育てるべき人材」を早期に見抜き、適切なチャレンジ機会を与えられます。
6-6. 最新評価モデル:OKR・360度評価・バリュー評価
① OKR(Objectives and Key Results)
Googleやメルカリなどが採用。個人目標と会社目標をリンクさせ、プロセスも評価。
② 360度評価
上司だけでなく、同僚・部下・顧客からもフィードバックを受けることで多面的に評価。
③ バリュー評価
「結果」ではなく、「どうやって行動したか」「組織文化を体現しているか」を評価対象とする。
6-7. 評価制度を活かすには“制度設計”より“運用設計”
どれほど優れた制度でも、運用に失敗すれば意味がありません。
運用設計で重要なポイントは以下の3つです。
評価者のトレーニング:主観と客観の区別、フィードバックスキルの習得
評価のタイミング:年1回ではなく、継続的な評価とフィードバック
フィードバック文化:点数ではなく、対話によって成長を促す文化づくり
6-8. 制度と組織文化は一体である
著者は、「制度は文化の反映であり、文化は制度によって形成される」と語ります。
公正な制度を機能させるには、組織全体が「透明性・対話・相互尊重」を大切にする文化を持っている必要があります。
6-9. まとめ
日本の評価制度は年功主義→成果主義を経て、次の段階へ来ている
本質的に公正な制度とは「納得できる評価の根拠」があること
成果だけでなく、ポテンシャル・行動・価値観体現も評価対象に
制度設計より運用設計が肝。評価者の教育と対話文化が不可欠
第7章 人材育成の本質:学び続ける組織
7-1. OJT神話の終焉
日本企業は長らく OJT(On-the-Job Training) に依存してきました。
「仕事は現場で覚えるもの」という考え方は、終身雇用・年功序列制度の下では有効でした。長期的に同じ組織に在籍する前提があるため、時間をかけて経験を積ませてもリスクが少なかったのです。
しかし、以下の要因でOJT一本足打法は限界を迎えています。
キャリアの流動化(転職・副業・プロジェクト単位の雇用)
技術革新のスピードが早く、現場経験だけでは追いつけない
現場リーダーに教育スキルや余裕がない
短期成果を求めるプレッシャーが育成を圧迫
結果として、「任せて覚えさせる」だけでは人が育たず、スキル格差が拡大しています。
7-2. リスキリングとリカレント教育の必然性
21世紀型の人材育成では、リスキリング(Reskilling) と リカレント教育(Recurrent Education) が不可欠です。
リスキリング:技術革新や市場変化に合わせ、新しいスキルを習得する
リカレント教育:就業と学習を周期的に繰り返すことでキャリアを延伸する
米国や欧州では既に企業や大学が連携し、社会人向けの学習プログラムを常設しています。日本でも経済産業省がリスキリング支援制度を整備し始めていますが、企業の現場浸透はまだ道半ばです。
7-3. 学び続ける組織の条件
著者は「学び続ける組織(Learning Organization)」の条件を以下の5つに整理しています。
共通ビジョンの共有
何のために学ぶのか、組織全体が方向性を理解している。
自己マスタリー
個人が主体的にスキルや知識を高め続ける意欲を持つ。
チーム学習
個人の学びをチーム内で共有し、組織の知恵に変換する。
システム思考
短期的な成果だけでなく、長期的視点で学びの効果を測る。
知識循環の仕組み
学んだことが組織に定着し、再利用される構造がある。
7-4. 人材育成の三層モデル
育成の取り組みは、以下の三層で構成するのが効果的です。
基礎層(共通スキル)
コミュニケーション能力、問題解決力、デジタルリテラシーなど。
専門層(職務スキル)
職種や部門に特化した専門的知識と技術。
戦略層(未来スキル)
AI・データ分析・異文化理解・デザイン思考など、将来の変化に備えるスキル。
7-5. 国内外の先進事例
Google:20%ルール(勤務時間の20%を自己プロジェクトに使える制度)で自主学習とイノベーションを促進。
トヨタ自動車:技能伝承とデジタル教育を組み合わせた「トヨタ技術カレッジ」。
IBM:AI活用によるスキルマッチングシステムで社員の学習プランを自動生成。
これらの企業は、「学びが仕事に直結する」環境を作ることに注力しています。
7-6. マネジメント層の役割
育成を成功させるためには、管理職の姿勢が重要です。
部下に学習時間を確保させる
学んだ内容を業務に応用する機会を与える
学習成果を評価・承認する文化を醸成する
7-7. 個人ができる「自分を育てる戦略」
学習ポートフォリオの作成
自分のスキルや資格を可視化し、定期的に更新する。
アウトプット前提の学び
学んだことをすぐに実践・発信することで定着率を高める。
コミュニティ参加
社外の勉強会やオンラインサロンで多様な視点を得る。
7-8. まとめ
OJT頼みでは変化に対応できない
リスキリングとリカレント教育がキャリアの延命装置になる
学び続ける組織は共通ビジョン、自己マスタリー、チーム学習が鍵
マネジメント層は学びの時間と機会を保証し、成果を評価する必要がある
第8章 グローバル化と多様性:組織の境界を越えて
8-1. なぜ今「境界を越える」必要があるのか
21世紀の企業活動は、物理的国境・文化的国境・組織的境界が急速に低くなり、国や企業をまたぐ協働が日常化しました。
製品・サービスは世界市場を前提に設計され、人材は国籍を問わず採用され、競争相手は必ずしも同業種ではありません。
著者は、こうした状況を「境界が溶ける時代」と呼びます。そしてこの時代には、境界を越えて価値を生み出す能力が個人・組織双方に不可欠となります。
8-2. グローバル化の三つの波
市場のグローバル化
世界のどこで生産し、どこで販売するかが自由になり、競争範囲が国際的に拡大。
人材のグローバル化
リモートワークやオンライン採用により、地理的制約なく人材を獲得可能に。
情報のグローバル化
SNS・動画・オンライン学習を通じ、世界中の知識やトレンドが瞬時に共有される。
8-3. 多様性(ダイバーシティ)の本質
ダイバーシティは単なる人種・性別の違いにとどまりません。
年齢、国籍、言語
専門分野、経験、価値観
働き方、ライフスタイル
本質は「異なる背景を持つ人々が共に価値を創造すること」にあります。
8-4. 多様性が組織にもたらす効果
イノベーション促進:異なる視点が新しい発想を生む
市場適応力向上:多様な消費者ニーズを理解できる
人材確保力強化:優秀人材が国籍や性別を理由に離脱しない
マッキンゼーの調査によれば、多様性の高い企業は収益性が平均で20%以上高いという結果もあります。
8-5. ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の課題
日本企業がD&Iに取り組む際、次の壁に直面します。
表面的な多様性にとどまり、実質的な意思決定への参加が進まない
日本語・日本文化の壁により外国人材が活躍しづらい
年功序列・終身雇用が異なる価値観を排除する圧力になる
8-6. 成功事例
ユニクロ(ファーストリテイリング):世界中から採用した人材を本社・海外店舗間で循環配置。
日産自動車:カルロス・ゴーン体制下で多国籍経営チームを編成し、迅速な意思決定を実現。
SAP:障害者雇用を戦略的に進め、製品開発や顧客サポートに新しい視点を導入。
8-7. 多様性を活かすマネジメント
心理的安全性の確保
異なる意見が受け入れられ、発言できる環境を作る。
インクルーシブ・リーダーシップ
多様な背景のメンバーを理解し、それぞれの強みを引き出す。
共通言語の設定
業務遂行に必要な共通言語・ルールを明確化し、文化的衝突を減らす。
8-8. 個人が境界を越えるために必要なスキル
異文化理解力:価値観・習慣・コミュニケーションスタイルの差を理解する
語学力:単なる言語能力ではなく、異文化での表現力
適応力:環境変化に合わせて行動を変える柔軟性
グローバル・ネットワーキング:国境を越えて人脈を築く力
8-9. まとめ
グローバル化と多様性は競争優位の源泉
多様性は単なる人数比ではなく、価値創造に参加できる環境が必要
D&Iを成功させるには、心理的安全性・インクルーシブリーダーシップ・共通言語が鍵
個人も異文化理解・適応力・ネットワーキング能力を磨く必要がある
第9章 テクノロジーと未来の働き方
9-1. 技術革新が働き方を変えてきた歴史
働き方は、常に技術革新によって形を変えてきました。
産業革命:蒸気機関の発明 → 工場労働の拡大、都市への人口集中
電気・電話・自動車:移動と通信の高速化 → 国際ビジネスの加速
コンピュータ革命:事務作業の自動化、情報管理の効率化
インターネット革命:場所や時間の制約からの解放
そして今、AIやメタバースといった技術は、働き方の構造を再び根本から変えようとしています。
9-2. AIと自動化の影響
① 定型業務の置き換え
AIはデータ入力、スケジュール調整、カスタマーサポートなど、定型的でルールベースの業務を高速かつ正確に行えます。
② 分析・意思決定の高度化
大量のデータを瞬時に解析し、予測や提案を行うAIは、ビジネス戦略や商品開発の精度を高めます。
③ 新しい職種の誕生
AIトレーナー、データ倫理担当、プロンプトエンジニアなど、AIと共存するための新たな専門職が生まれています。
9-3. メタバースと仮想空間労働
メタバースは、3D仮想空間内でのコミュニケーションや業務を可能にします。
バーチャル会議室での国際ミーティング
仮想店舗での接客や販売
デジタルツインを使った製造・物流のシミュレーション
これにより、地理的制約を超えた働き方がさらに進化します。
9-4. テクノロジーが変える組織の形
完全分散型組織(DAO)
ブロックチェーン上で運営される、中央管理者を持たない組織形態。
プロジェクトベースの雇用
必要な人材を必要な期間だけ集めるオンデマンド型チーム。
人間+AIのハイブリッドチーム
AIが事務処理や分析を担い、人間が創造性と判断を担う役割分担。
9-5. テクノロジー活用における課題
デジタル格差:スキルや設備の差が生産性格差を生む
セキュリティとプライバシー:情報漏洩や監視社会化のリスク
労働アイデンティティの揺らぎ:AIが業務の大部分を担う中で、人間の役割をどう定義するか
9-6. テクノロジー時代の必須スキル
デジタルリテラシー:新しいツールを使いこなす力
クリティカルシンキング:AIの出した結果を鵜呑みにせず、検証・判断する力
創造性と共感力:人間にしかできない価値創造
ラーニングアジリティ:新しい技術を学び、素早く適応する姿勢
9-7. 未来予測:働き方はどうなるか
著者は、2030年までに以下の変化が加速すると予測します。
企業の半数がリモート・ハイブリッドワークを標準化
社員の3割以上が副業・複業を持つ
AIが事務系職種の50%以上の業務を代替
DAO型組織やプロジェクト型雇用が一般化
9-8. 人間らしい働き方を守るために
テクノロジーの進化は止められませんが、それが人間らしさを奪う必要はありません。
AIに任せる業務と、人間が担う業務を明確に線引きする
技術導入の目的を「効率化」だけでなく「価値創造」に設定する
働き手が主導権を持てるルール設計を行う
9-9. まとめ
テクノロジーは働き方を根本から変えるが、課題も存在する
AI・メタバース・DAOなど新しい組織形態が現れる
人間の価値は創造性・共感力・批判的思考にシフト
技術導入は「効率」だけでなく「人間らしさ」を守る視点が必要
第10章 総括:組織と働き方の本質を掴む
10-1. 時代の変化と働き方の再定義
これまでの議論を通じて明らかになったのは、組織と働き方は歴史的・社会的背景に強く依存し、常に進化しているということです。
20世紀型モデル:安定・忠誠・終身雇用・年功序列
21世紀型モデル:柔軟性・共感・ジョブ型・成果+価値観評価
このシフトは単なる制度変更ではなく、働くことの意味そのものの再定義を迫っています。
10-2. 本質的な組織像
著者が提示する「これからの理想的な組織像」は、以下の要素を併せ持つものです。
目的駆動型(Purpose-Driven)
利益だけでなく、社会的意義や存在理由を明確に持つ。
共創型(Co-Creation)
上下関係を超えて、メンバー全員が価値創造に参加。
適応型(Adaptive)
市場や技術の変化に素早く対応できる柔軟性。
包摂型(Inclusive)
多様な背景を持つ人材が活躍できる環境。
10-3. 本質的な働き方の条件
個人が持続的に成長し、組織と共に価値を生み出すためには、次の条件が不可欠です。
自己決定感:仕事の進め方やキャリアを自ら選択できる
成長機会:学びと挑戦の場が常に提供される
意義の実感:自分の仕事が誰かの役に立っていると感じられる
健全な環境:心理的安全性とワークライフインテグレーション
10-4. 制度・文化・リーダーシップの三位一体
制度改革だけでは組織は変わりません。文化とリーダーシップが制度を支え、制度が文化とリーダーシップを強化するという三位一体の変革が必要です。
制度:公正な評価・柔軟な雇用形態・スキル育成体系
文化:透明性・対話・挑戦を奨励する風土
リーダーシップ:共感型・支援型・変革型のハイブリッド
10-5. 個人へのメッセージ
これからの働き手は、「会社に依存する存在」から「自分のキャリアのオーナー」へと意識を変える必要があります。
学び続ける姿勢を持つ
組織の目的と自分の価値観を照らし合わせる
変化に適応できる柔軟性を磨く
組織内外のネットワークを広げる
10-6. 組織への提言
多様性を形式だけでなく実質的に活かす仕組みを構築
AIやテクノロジーを人間の能力を補完する方向で導入
働き手の主体性と共感を高めるマネジメントを推進
評価・育成・採用のすべてを「目的駆動型」に統合
10-7. 未来への展望
2030年代、働き方はさらに多様化し、組織はよりネットワーク化・分散化します。
DAOやメタバース型組織、AIとの共同作業が一般化し、**「組織に属すること」よりも「価値を共創すること」**が働く意味の中心となるでしょう。
10-8. 最終メッセージ
組織は人のためにあり、人は組織を通じて社会に貢献する。
この循環が途切れない限り、働き方は進化し続ける。
本書の学びを実践に移すことで、私たちは公正で柔軟で、人間らしい働き方を次世代に引き渡すことができます。
あとがき
本書を執筆しながら、改めて感じたのは「組織と働き方は切り離せない」という事実です。
優れた組織は、人を育て、人は組織を成長させます。その循環がうまく回っているとき、組織は活力を持ち、働く人々は誇りを持てます。
一方、その循環が途切れれば、制度は形骸化し、人材は流出し、組織は硬直化します。制度改革や技術導入は必要ですが、それ以上に大切なのは「何のためにそれを行うのか」という目的意識です。
これからの時代、働く意味や組織の存在理由は、一層問い直されていくでしょう。その中で、本書が少しでも、あなたの選択や行動の後押しになれば嬉しく思います。
最後に、変化の激しい時代を生き抜く鍵は、「学び続ける姿勢」と「他者との共創」です。この二つを胸に、未来の働き方を共に創っていきましょう。
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