第1章 7カ月ぶり安値──なぜビットコインは“9万ドル割れ”まで急落したのか
2025年11月18日。
ビットコインはついに 8万9300ドルを割り込み、
7カ月ぶりとなる“9万ドル割れ”の安値をつけた。
10月上旬の史上最高値 12万6000ドル から
わずか40日ほどで約 ▲30% の急落。
これは単なる価格調整ではない。
むしろ、
複数のリスクが同時多発して起きた「複合ショック」 である。
市場はこうした“連動リスク”を最も嫌う。
今回の暴落の背景には以下が複雑に絡む:
■① FRB利下げ後退
12月利下げ期待が後退し、
「金融引き締め長期化」が意識された。
暗号資産は金融緩和で買われ、
金融引き締めで売られる最も典型的なリスク資産である。
つまり今回の急落は
“FRBショックの再来”。
■② ヘッジファンドがETFを通じて大量売却
10月末以降、
米ビットコインETFでは 連日の資金流出 が続いている。
特に11月13日は
過去最大規模の8.69億ドル流出。
短期筋(ヘッジファンド)は
「金利高→リスクオフ」の局面で最も速く逃げる。
ETF経由で短期筋が売りまくっている
という状況だ。
ETFは“出入り口が広すぎる”。
だからこそ、
売りが売りを呼ぶ自動連鎖 が起きやすい。
■③ 仮想通貨市場の構造的脆弱性
ビットコインは今や巨大市場に育ったが、それでも…
テスラの株価
ナスダック指数
金(ゴールド)
為替市場(ドル円)
などと比較すると、
市場参加者が偏っている。
極端に短期思考の資金が多いため、
売りシグナルが出ると一斉に逃げる。
■④ 年初来騰落率がついにマイナス転換
2025年のビットコインはずっと“勝ち組”だった。
しかし、
ついに年初来でマイナスへ転落。
投資家心理に与える影響は非常に大きい。
含み益が消える
利確売りが強まる
ポジション整理が連鎖する
こうして暴落は加速した。
■⑤ 9万ドルという“重要心理線”を割った
9万ドルは
個人投資家
短期トレーダー
ETFアルゴ
が最も意識するライン。
これが割れた瞬間、
ストップロス(逆指値)を巻き込み暴落が一段加速した。
第2章 資金流出の主犯は誰か──ETF、機関投資家、ヘッジファンドの行動心理
今回の暴落の“本丸”は、
ETFからの資金流出 である。
ビットコインETFは2024年に承認され、
暗号資産市場に巨大資金を呼び込んだ。
だが同時に、
暗号資産市場は「プロの短期筋」に支配されやすくなった。
■ETFは“新時代の巨大な出入り口”
ETFは
売買が簡単
取引時間が長い
機関投資家が入りやすい
空売りがしやすい
デリバティブも豊富
という特徴がある。
つまり“売りが圧倒的に早い”。
今回の8.6億ドルの流出は、
ETFの巨大さを示す象徴だ。
■ヘッジファンドは利下げ後退を嫌う
ヘッジファンドの索敵レーダーは常にこうだ:
金利高 → リスク資産売り
金利低 → リスク資産買い
ビットコインも例外ではない。
むしろ最も金利に敏感だ。
■ETF市場の悪循環
ETF市場では、
売りが売りを呼ぶ「機械的連鎖」 が起きる。
- 利下げ後退で売り
- ETF流出
- NAV乖離調整でさらに売り
- 9万ドル割れで逆指値発動
- アルゴが売り加速
- 追証で強制決済
- さらに売りが連鎖
これが“暴落特有の連鎖反応”。
**第3章 ビットコインと日本株はなぜ連動するのか
──ハイテク投資家の“二刀流構造”と海外勢の先物仕掛け**
18日の東京株式市場で、
日経平均は −1620円(−3.2%) の暴落を記録した。
これはビットコイン急落とほぼ同時。
■日本の個人投資家は「ビットコイン+ハイテク」の二刀流
日経記事にもある通り、
個人の短期勢はハイテク株とビットコインをセットで売買する
これは事実だ。
理由はシンプル。
ボラティリティが高い
大きく儲かる
相場観が似ている
SNSで拡散されやすい
米国市場と連動しやすい
つまり
“同じ人間が同じテンションで売買している” のだ。
だから連動する。
■海外投機筋は“ビットコイン→日経先物”の順に仕掛ける
海外勢(CTA、マクロ系ファンド)は
ビットコインを「リスク指標」として使っている。
BTCが下がる
→ リスクオフ
→ 日本株先物を売る
→ 日経平均が落ちる
→ 個人も売る
→ さらに落ちる
この構造は
2021年以降ずっと続いている。
■ビットコインは今や“世界金融市場の温度計”
金利動向
景気後退観測
投資家心理
リスク選好度
これらを最速で反映するのがビットコイン。
だから日本株にも波及する。
第4章 今後のシナリオ──ビットコインはどこまで落ちるのか?
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
アナリストの松嶋氏が指摘したとおり、
7万ドル台 が現実味を帯びている。
ここでは3シナリオを整理する。
■① ベースシナリオ(50%)
7.5万〜8.0万ドルで下げ止まり→反発へ
条件:
FRBの利下げ再期待
ETF流出が一服
ナスダックが持ち直す
個人投資家が買い戻す
このケースなら年末までに
9.5万ドル前後 に戻る可能性も。
■② 悲観シナリオ(30%)
7万ドル割れ→6.5万ドル付近へ
条件:
米株が続落
長期金利が再上昇
ETF流出が加速
中国景気悪化
マクロファンドの売りが継続
2022年の暴落パターンと似る。
■③ 楽観シナリオ(20%)
8.8万ドルあたりで底打ち→再び10万ドル回復
条件:
FRB要人発言で緩和期待が上昇
ETF急流入
ナスダック強反発
個人のFOMO買いが発生
個人的には“急反騰”の条件がまだ整っていない。
第5章 結論:ビットコイン暴落は“単なる価格変動”ではなく、世界金融の断層が動いたサインである
今回の急落はこうまとめられる。
■① 金融政策×ETF×ヘッジファンド
ビットコイン暴落は
グローバル金融環境の変化に対する過剰反応。
■② 日本株への波及は必然
個人の二刀流構造
海外勢の先物売り
ハイテク株と連動
リスクオフの心理拡大
■③ ビットコインは今や“リスク資産の王様”
変動率、資金流入、SNS拡散力、個人人気、ファンド動向。
すべてが巨大化しすぎて、
世界市場を揺らす存在となった。
■④ 投資家が今必要なのは「価格」ではなく「構造理解」
暴落は避けられない。
しかし投資家として重要なのは、
“なぜ落ちたか”を構造的に理解すること。
FRB
ETF
ファンド心理
個人行動
日本株のメカニズム
これらが線でつながると、
次の暴落・次の反転が読めるようになる。
最終結論
ビットコイン暴落は、
単なる仮想通貨ニュースではない。
これは
世界金融市場の温度が急激に下がったサインであり、
2025年相場の“転換点”になる可能性が高い。
【了】



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