INPEX(1605)企業分析レポート|2025年5月版
1. 概要と基本情報
INPEX(インペックス)は日本最大の石油・天然ガス開発企業で、政府が黄金株を保有する準国策銘柄。設立は2006年で、豪州でのLNG事業「イクシス」などを中心に、世界各地でエネルギー開発を展開しています。業種分類は「鉱業」に属し、主力事業は原油76%、天然ガス23%という構成です。
2. 財務状況とキャッシュフロー
2024年12月期の財務指標では、ROEは9.5%、ROAは5.8%と健全な数値を記録。1株益は345.1円で、過去5年間で着実に利益を積み上げてきました。営業キャッシュフローは6,547億円と潤沢で、設備投資(3,195億円)や研究開発(356億円)にも余裕をもって対応しています。
3. 業績推移と配当
売上高は2020年の7.7兆円から、2022年に一時的に23兆円を突破。その後はやや減収傾向にありますが、2025年予想でも約21兆円と高水準を維持。営業利益率は高く、2024年は12,717億円の営業利益を確保。配当も1株90円と高水準で、PER6.6倍・PBR0.8倍という指標は「バリュー株」としての妙味を感じさせます。
4. 株価の推移と市場評価
現在の株価は1,824円。PERやPBRに割安感があり、年初来高値(2,151円)からは調整中ですが、1,650円の年初来安値からは回復基調。信用倍率は11.06倍と高く、個人投資家からの人気も高い状況です。
5. 原油価格の世界動向
2025年5月現在、原油価格はWTIで56ドル前後と低迷中。これは中東地域の供給安定と、米国の戦略備蓄放出の影響が背景にあります。また、世界的なEVシフトの流れにより長期的には需給バランスが変動していますが、依然としてエネルギー安全保障の観点から原油・ガスへの依存度は高く、INPEXの需要基盤は堅調です。
一方、原油価格が低下するとINPEXの利益率にも影響を与えるため、原油相場の変動には警戒が必要です。VIX指数が22前後で推移している現在、市場はややリスクオフ気味です。
6. ライバル企業の動向
国内ではJX金属(5016)やENEOSなどがライバルですが、INPEXの最大の強みは「海外油田保有比率の高さ」と「政府保有株による安定性」。JX金属が銅・ニッケルに軸足を置いている一方、INPEXは原油・ガスに特化しています。
また、三井物産や三菱商事といった総合商社もエネルギー分野に進出していますが、上流(採掘・開発)におけるノウハウと安定性ではINPEXが一歩リードしている構図です。
7. 今後の成長戦略とリスク
INPEXはLNG案件の拡大に注力しており、イクシス以外にも中東・東南アジア・南米での新規開発が進行中。また、カーボンニュートラル時代に向けたCCS(炭素回収貯留)技術にも投資を強化しています。
ただし、以下のようなリスクも意識しておく必要があります。
原油価格の長期低迷による収益圧迫
政治リスク(特に中東・ロシア・アフリカ)
環境規制の強化による事業コスト増加
8. 投資判断とまとめ
INPEXは以下の理由から、長期保有に適した銘柄といえます。
高配当(利回り4〜5%)
PER・PBRからの割安感
安定したキャッシュフローと財務
政府出資によるバックアップ体制
原油・天然ガス市場の安定収益源
短期的には原油価格に連動しやすい面もあるため、タイミングを見て押し目での買い増しも有効です。中長期では、エネルギーの未来に賭ける投資家にとって「守りと攻めのバランスがとれたエッジの効いた大型株」と言えるでしょう。了
コメント