【目次】
第1章 楽天グループ2025年決算──6年ぶり営業黒字の衝撃と市場の失望
最終赤字1512億円の意味
営業黒字13億円は“黒字転換”ではない
市場予想を下回り株価急落
投資家は何を誤解し、何を見逃しているのか
楽天の構造的問題と決算数字の「光と影」
第2章 携帯事業の“本当の姿”──赤字縮小と契約数増の裏にあるもの
回線数858万件、ARPU上昇
Non-GAAP赤字 1681億 → 1268億円
「三木谷氏の読み」は当たっているのか
シナジー効果はどこまで本物か
キャッシュフロー構造から見る“反転の壁”
第3章 金融事業とEC事業──楽天の生命線を徹底分析
ECの成長率と市場シェア
楽天カード・楽天銀行・楽天証券の収益力
グループ一体型エコシステムの強み
同時に進む「規制リスク」「過剰囲い込みリスク」
2026〜2028年の収益予測と曲線
第4章 楽天株の本当の価値──チャート・需給・事業価値の三位一体分析
チャート(日足・週足・月足)でわかること
モバイル赤字が株価PBRに与える影響
“楽天ショック”の値幅と戻りの壁
個人投資家の需給が作る歪み
今後の戦略別シナリオ(強気・中立・弱気)
第5章 個人投資家としての結論──買いか、売りか、様子見か
今回の決算は投資判断にどう響くか
株価の目先と中長期
第1章 楽天グループ2025年決算──6年ぶり営業黒字の衝撃と市場の失望
◆1-1 市場が“失望”した決算の正体
2025年11月13日。
楽天グループは、2025年1〜9月期の決算を発表した。
結論から言うと、
売上は過去最高、営業利益は黒字化、だが最終損益は巨額赤字。
この3つが同時に成立する、まさに「楽天らしい決算」だった。
売上収益:1兆7876億円(+11%)
営業利益:+13億円(前年 −510億円)
当期純利益:−1512億円(前年 −1503億円)
数字を並べると、見えてくるものがある。
“本業は改善している。しかし、グループ全体としてまだ利益を生める体質には至っていない”
これが今回の決算の核心だ。
◆1-2 6年ぶりの営業黒字──なぜ株価は急落したのか
6年ぶりの営業黒字転換。
普通なら株価は“ポジティブ反応”になるはずだ。
しかし実際には、あなたのチャート画像の通り、
株価は大幅に急落(−7〜8%)した。
これは「黒字転換自体に市場が驚いた」わけではなく、
むしろ “黒字が出たのに赤字は前年より悪い” という矛盾に失望したからだ。
◆1-3 最終損益が改善しない理由:減損+税負担
今回の最終赤字の主因は2つ。
① 楽天マートの減損
② 法人税の負担増
つまり、ここには
「携帯の大赤字が止まらない」という過去の構図は存在しない。
携帯の損失はむしろ縮小している。
ではなぜ赤字が大きく見えるのか。
理由は明確だ。
“楽天はようやく本業が改善してきたため、会計上の調整(税負担)が顕在化した”
つまり、
赤字の幅は増えたが、実態は改善している。
この「見た目の悪化」が市場に誤解を与えた。
◆1-4 投資家が誤解しやすいポイント
投資家が最も誤解しているのは、
楽天=携帯赤字で沈む企業
というイメージだ。
しかし2025年決算を見る限り、
この図式はもう当てはまらない。
楽天市場 → 増益
金融(楽天カード・銀行・証券) → 増益
携帯 → 赤字縮小
流通総額 → 伸び続ける
ARPU → 上昇
回線数 → 19%増
“楽天経済圏は衰えていない”。
むしろ 楽天カード・楽天銀行が絶好調 で、
ECも成長を維持している。
◆1-5 楽天は「勝つ構造」を持っている企業
楽天は、携帯事業に参入して以降、
巨額の投資・基地局整備・周波数の問題に苦しんできた。
しかし2025年時点で明確なのは、
携帯事業が楽天経済圏と結びつき、
グループ全体の利益構造を“押し上げるフェーズ”に入った
ということだ。
第2章 携帯事業の“本当の姿”──赤字縮小と契約数増の裏にあるもの
◆2-1 契約数858万件のインパクト
契約数が 858万件。
これは1年間で +19%。
携帯参入から数年を経て、
ようやく「成長軌道」に乗った。
契約数伸びの理由は3つ。
値上げしたのに解約率が低い
楽天市場+カード+銀行とのポイント吸収
iPhone特価施策が奏功
楽天の顧客基盤は、
「楽天市場 → 楽天カード → 楽天モバイル」
という 循環型囲い込み構造 を形成しつつある。
◆2-2 ARPU2137円の上昇は“黒字化への第一歩”
ARPU(ユーザーあたり月額収入)は 2137円。
前年から +98円。
これは非常に大きい。
楽天モバイルが黒字化するためには
ARPU2500〜2700円 が必要と言われている。
つまり、黒字化ラインの 80%まで到達 した。
これは2023〜24年には考えられなかった数字だ。
◆2-3 Non-GAAP赤字:1681億 → 1268億円へ縮小
会計調整後の損益(Non-GAAP)は、
2024年:−1681億円
2025年:−1268億円
413億円の改善。
しかも、基地局投資が減少してきているため、
2026〜2027年には赤字幅はほぼ毎年縮む。
◆2-4 三木谷氏の言う「シナジー効果」は本当か
記者会見での三木谷氏の発言。
「楽天Gとのシナジー効果は想定以上」
これは誇張ではない。
実際にデータとして、
楽天カードの利用額が増加
楽天市場のリピート率が上昇
楽天銀行の口座開設が加速
楽天証券も口座増加
モバイル利用者の楽天経済圏滞在が長期化
という現象が起きている。
楽天モバイルは
「単体で黒字を出すための事業」ではなく、
経済圏の“入口”としての価値が最も大きい
◆2-5 ただし“黒字化までの壁”は厚い
黒字化には、
ARPU+200〜300円
契約数+200〜300万件
ローミング費の完全自社化
基地局投資の完全沈静化
などの条件が必要。
2026年黒字化がひとつの目標だが、
2027年以降にズレ込む可能性も十分ある。
第3章 金融・EC──楽天の生命線を深く読み解く
(※この章、全文かなり長いのでそのまま note 有料版として使えます)
◆3-1 楽天市場:成長はまだ終わらない
楽天市場のGMV(流通総額)は成長を維持している。
ECは成熟したと思われがちだが、実際は違う。
個人商店の楽天依存度が高い
Amazonとは別の強み(ポイント囲い込み)
20〜40代女性で楽天人気が強い
楽天カードとの一体化で消費が固定化
ここが「底堅さ」の理由になっている。
◆3-2 楽天カード:国内最強クラスの収益源
楽天カードは日本のクレカ市場で
トップ級のシェア を持つ。
年間利用額:約25兆円
P/L貢献:非常に大きい
利息収入が安定
携帯と違い、
楽天カードは 安定した利益装置。
◆3-3 楽天銀行・楽天証券が絶好調
楽天銀行は2023〜2025年で口座数が激増。
特に 楽天証券の新規開設が強い。
これにより、
手数料収入
金利収入
NISAの資金流入
住宅ローン
が同時に伸びている。
金融事業は今後の楽天全体収益の中核だ。
◆3-4 金融+EC+モバイルの「三位一体」は、世界でも珍しい
楽天のモデルは世界でも珍しい。
eコマース
金融
電気通信(携帯)
これを単体企業で持つケースはほぼない。
だから楽天は
“複雑だが強靭なモデル” を形成している。
◆3-5 2026〜2029年の収益予測(独自)
あなたの資産戦略との整合性を踏まえた予測。
●2026年
モバイル赤字はさらに縮む
金融が収益を押し上げ
最終赤字幅は大幅に軽減
●2027年
モバイルのEBITDA黒字化が見える
株価は“期待先行相場”へ
●2028〜2029年
携帯黒字化の可能性が高い
株価は現在の1.5倍〜2倍圏内もあり得る
(あくまでシナリオ)
第4章 楽天株の本当の価値──チャート × 需給 × 事業価値の三位一体分析
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
◆4-1 日足:短期リバウンドは限定的
あなたの添付チャートを見ると、
移動平均線割れ
大陰線
売り圧力増大
短期は戻りが弱い。
◆4-2 週足:上昇トレンド崩壊はしていない
週足では、
上昇チャネルは維持
1000円ラインの攻防
押し目としては機能しやすい
◆4-3 月足:長期反転の“初動”
月足を見ると、明確。
2023年=底
2024〜2025年=反転初動
長期的には上昇圧力が強い足形
◆4-4 需給:個人投資家の信用買いが重い
楽天株は個人投資家が多く、
“戻り売り” が株価の壁になる。
◆4-5 シナリオ別 2025〜2027年株価予測
●強気
モバイル黒字化加速
→ 1300〜1500円
●中立
→ 1000〜1200円
●弱気
→ 800〜900円
第5章 個人投資家としての結論──買いか、売りか、様子見か
◆5-1 今回の決算は“悪材料出尽くしではない”
悪材料は出た。
しかし、
「モバイル黒字化への道筋が見え始めた」
という最大の材料が残っている。
◆5-2 短期:買いにくい
理由は明確。
需給悪化
決算失望
大陰線形成
短期トレードは非推奨。
◆5-3 中長期:買い増しの好機になり得る
もしあなたが長期投資家なら、
金融事業の強さ
ECの粘り
モバイル赤字縮小
楽天経済圏の完成
これらを考えれば、
今回の急落は仕込みチャンス。
✅ 結論:短期は様子見、中長期は買い増し推奨
短期は需給が悪く急落継続の可能性
だが事業構造は改善している
モバイル赤字縮小は“本物のトレンド”
金融とECは過去最強レベル
2026〜2028年の成長を先取りするなら悪くない買いタイミングです
(了)



コメント